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第九章 おまじないの正体
「おじゃまします」
「ど、どうぞ……」
わあ、三条くんだ。いや、毎日学校で会ってるけどさ。でもなんか、ね! 家に遊びに来るのって、学校で会うのとちがうじゃん!
とうとう土曜日。約束どおり、三条くんが、わが家にやってきた。お父さんは買い物に行っているから、いまはわたしと三条くんのふたりっきりだ。
この前、三条くんには「気にしなくていいよ」とか言ったけど、本当はわたしだって、緊張しているわけで。ふたりして、そわそわ、そわそわ。
「そ、掃除はしたけど、ちらかってたらごめんね!」
なんて予防線を張りながら、三条くんをわたしの部屋に招く。
「……なんというか、すごいな」
「へっ?」
三条くんは部屋に入るなり、ぽかんとした。な、なんで? けっこう、しっかり片づけたよ⁉ きれいなはずなのに!
「自分のポスターを部屋に貼ってるひと、はじめて見たぞ」
「あ、なんだ。これのこと? スタッフさんが作ってくれたんだ~」
三条くんが見ているのはベッドの横にある壁。そこには、どーん、と特大のポスターが貼ってある。写ってるのは、もちろん、わたし。
「去年のモデル人気投票で、一位取ったときの写真! かわいいでしょ」
王冠をつけて、満面の笑みを浮かべるわたし。いつ見ても美少女!
「毎日見てもあきないよね~、美少女は!」
「自分で言う自信は、尊敬に値するとは思うぞ」
三条くんは呆れたみたいに言って、用意してあったクッションに座った。むむ……、やっぱり三条くん、冷たい。もっとこう、「エナさん、こんなにかわいかったんだな! やっときみの魅力に気づいたよ!」とか言ってくれてもいいのにさ。
……いや、そんな三条くん、気持ち悪いかも。自分で妄想しておいて、うげっ、て思っちゃった。
三条くんはすっかり緊張が解けたみたいで、いつものクールな顔だ。
「ちょっと待っててね。飲み物持ってくる」
わたしはキッチンに行って、サイダーをコップに注ぐ。お盆にのせて、そのお盆は頭の上へ。手もお盆から離して、鼻歌まじりに部屋に戻る。
「お待たせ~。ていうか、三条くん、炭酸飲めるひと?」
「ああ、問題な……エナさん⁉」
「ん?」
わたしを見るなり、三条くんが目を見開いた。やっぱ、いまのメガネだと、表情の変化がよく見えるなあ。よきよき。
「なぜ、お盆を頭に⁉ 落ちる……!」
「大丈夫大丈夫~。落とすヘマなんてしないよ。だってわたし、モデルだもん!」
お盆を頭にのせたまま、くるっと回ってみせた。三条くんは「ひっ」と顔を青くしながら、わたわたする。
「それとモデルは関係あるのか⁉」
「あるよ。これね、姿勢がよくないとできないんだ」
モデルの先輩から教えてもらった、ウォーキングの練習方法なんだよ。ファッションショーできれいなドレスを着て歩くには、コツがいる。こうやって頭になにかをのせて歩くと、バランスのいい姿勢になるんだ。
ま、先輩に教えてもらったのは、本を頭にのせるって方法なんだけどね。
「本はもう楽勝過ぎて、最近はいろいろのせてるんだ。三条くんも姿勢いいし、できちゃうんじゃない?」
よいしょ、とお盆を机に置く。
「……エナさんの家は、いろいろと、おどろかされるな」
「そうかなあ? ふつうじゃない?」
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