第十一章 不安

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 いつのまにか、わたしは眠っていたらしい。  ピンポン。  チャイムの鳴る音で、目が覚めた。だれだろう。わたしはカーテンをすこしだけ開けた。窓からは玄関が見える。 「……三条くん」  立っていたのは、三条くんだ。  どうしよう。お父さんは、仕事でいない。でもいま、三条くんには会いたくない。そう思っていると、三条くんがこちらに視線を向けた。あわててカーテンを閉じて、ベッドにうずくまる。  スマホがふるえる。三条くんからの着信だ。心配して、来てくれたんだ。わかってる。じわっと目の奥が熱くなる。  助けてほしい。だけど、ほうっておいてほしい。  ぎゅっとひざを抱えると、涙がこぼれた。 (どうしたらいいか、わかんないよ……っ!)  そのうち、着信は止まった。そっとカーテンを開けると、三条くんの姿もない。それからしばらくして、父さんが帰ってきた。 「エナ。学校のプリントが、ポストに入ってたよ」 「……ありがとう」  きっと三条くんが持ってきてくれたんだ。わたしは父さんからプリントを受け取った。すると、ひら、と一枚のメモ用紙が足もとに落ちる。 『無理するな』  そっけないのに、優しいひと言。  わたしはまた、心が苦しくなった。
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