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ふと、ポケットに入れたスマホに気づく。警察とか、呼んだほうがいいかもしれない。ふるえる手でスマホを取る。真っ暗な部屋には、スマホの画面がまぶしい。
ピコン。
SNSの通知が鳴った。雑誌「すまプリ」の公式アカウントが、記事を投稿したらしい。
(人気投票のこと、とか……?)
こんなときなのに気になって、わたしはSNSを開く。
『もうすぐ投票締め切り間近! モデルのみんな、がんばってます!』
そんな言葉といっしょに、わたしたちの写真が投稿されていた。コメントが次々についていく。
『エナちゃん、かわいい!』
『やっぱり、エナちゃんが一位でしょ』
『でも、ハナノちゃんもかわいい~』
『わたしは、エナちゃん一択!』
どんどん、どんどん、コメントがつく。
「エナちゃん」
「エナちゃんってば」
外からも、声がかけられる。
みんなが、わたしを呼ぶ。
かわいいって言う。
(それ、ほんとの気持ち……?)
わたしは膝に額をつけて、あふれそうになる涙をこらえる。
マジモノを祓わないって決めたのは、わたし。でも、みんなの「好き」って、マジモノのおかげでしょ。わたし、それでいいの?
ひとの心を操っちゃダメって思ったはずなのに。
それでもわたしは、一位にならなきゃ。
ぐるぐる、ぐるぐる。
いろんな思いが頭の中をぐちゃぐちゃにしていく。
とうとう耐えきれずに、涙がぽろぽろと落ちた。
どうしよう。どうしよう。
ねえ、三条くん。
「たすけて……」
そのときだ。
「悪しき者との縁を断ち切れ。……解!」
静かに響く、きれいな声がした。
わたしは扉を振り返る。いまの声って。
「エナさん! 大丈夫か⁉」
「……三条、くん?」
「ああ。もうおれ以外いないから、ここを開けてくれるか?」
優しい声に、わたしはふるえる手で鍵をはずす。小さく扉を開けて、おそるおそる外を見た。さっきの男の子ふたりは、地面にくたりと倒れている。
「エナさん。よかった。怪我はしていないか?」
(……ああ。三条くんだ)
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