第十一章 不安

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 ふと、ポケットに入れたスマホに気づく。警察とか、呼んだほうがいいかもしれない。ふるえる手でスマホを取る。真っ暗な部屋には、スマホの画面がまぶしい。  ピコン。  SNSの通知が鳴った。雑誌「すまプリ」の公式アカウントが、記事を投稿したらしい。 (人気投票のこと、とか……?)  こんなときなのに気になって、わたしはSNSを開く。 『もうすぐ投票締め切り間近! モデルのみんな、がんばってます!』  そんな言葉といっしょに、わたしたちの写真が投稿されていた。コメントが次々についていく。 『エナちゃん、かわいい!』 『やっぱり、エナちゃんが一位でしょ』 『でも、ハナノちゃんもかわいい~』 『わたしは、エナちゃん一択!』  どんどん、どんどん、コメントがつく。 「エナちゃん」 「エナちゃんってば」  外からも、声がかけられる。  みんなが、わたしを呼ぶ。  かわいいって言う。 (それ、ほんとの気持ち……?)  わたしは膝に額をつけて、あふれそうになる涙をこらえる。  マジモノを祓わないって決めたのは、わたし。でも、みんなの「好き」って、マジモノのおかげでしょ。わたし、それでいいの?  ひとの心を操っちゃダメって思ったはずなのに。  それでもわたしは、一位にならなきゃ。  ぐるぐる、ぐるぐる。  いろんな思いが頭の中をぐちゃぐちゃにしていく。  とうとう耐えきれずに、涙がぽろぽろと落ちた。  どうしよう。どうしよう。  ねえ、三条くん。 「たすけて……」  そのときだ。 「悪しき者との縁を断ち切れ。……解!」  静かに響く、きれいな声がした。  わたしは扉を振り返る。いまの声って。 「エナさん! 大丈夫か⁉」 「……三条、くん?」 「ああ。もうおれ以外いないから、ここを開けてくれるか?」  優しい声に、わたしはふるえる手で鍵をはずす。小さく扉を開けて、おそるおそる外を見た。さっきの男の子ふたりは、地面にくたりと倒れている。 「エナさん。よかった。怪我はしていないか?」 (……ああ。三条くんだ)
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