第十一章 不安

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 三条くんは、心配そうに、わたしの顔をのぞきこんでいた。 「なんで、ここに」 「あ、ストーカーではないぞ。断じて!」 「へ?」  先手を打つように、三条くんが言った。 「桜木さんから、今日は撮影があると聞いたんだ」 「はなのんから?」 「ああ。エナさんのことだ、学校は休んでも、撮影は休まないだろうと思って、会いに来た」 「……それはそれで、ストーカーなんじゃ」 「だからちがう! おれはただ、クラスメイトとして心配をだな」 「……ごめんね、三条くん」  つい、口からこぼれた言葉に、三条くんははっとして口を閉ざした。目の奥がじわっと熱くなって、また、涙がこぼれる。 「わたし……、勝手だよね。マジモノ祓うって言ったり、やっぱり嫌だって言ったり」 「……まあ、そうだな。エナさんに振り回されているなとは、感じている」 「ご、ごめん……。でも、三条くんが来てくれたこと、すごくうれしくて……、さっき、すごく、怖かったから」  言葉がつまる。それでも、わたしは必死に伝えた。ぐちゃぐちゃな言葉でも、たぶん、三条くんは聞いてくれる。 「ほんとは、わたし、マジモノに頼ってちゃダメだって、思うんだよ。だけど、どうしても怖くて、不安で」 「不安? なぜだ」 「わたしには、最初から魅力なんてなかったのかもって、思うから……」  顔を伏せる。  握った拳に、涙がぽたぽた落ちた。  いままでみんなに好かれていたのが、ぜんぶ、マジモノのおかげだったら。本当のわたしは、だれからも好かれていなかったら。どうしたらいいんだろう。 「エナさん」 「なに……、うあっ⁉」  むぎゅっ。  突然、わたしは頬を三条くんの手に挟まれた。  はさまれた顔を、上に向かせられる。  あ、やばい。これいま、変顔になってる。  むぎゅって顔が変形してる。モデルとしてありえない顔だ。  ……そう思いつつ、見上げた先にある三条くんの顔を見て、なにも言えなくなった。 「九重エナに、うつむいている姿は似合わない」  三条くんの澄んだ瞳が、わたしを見てる。  まっすぐな、きれいな瞳。 「大丈夫だ。エナさんは、マジモノがいなくても、絶対に平気だから」  ふっと、三条くんが表情を和らげた。
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