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三条くんは、心配そうに、わたしの顔をのぞきこんでいた。
「なんで、ここに」
「あ、ストーカーではないぞ。断じて!」
「へ?」
先手を打つように、三条くんが言った。
「桜木さんから、今日は撮影があると聞いたんだ」
「はなのんから?」
「ああ。エナさんのことだ、学校は休んでも、撮影は休まないだろうと思って、会いに来た」
「……それはそれで、ストーカーなんじゃ」
「だからちがう! おれはただ、クラスメイトとして心配をだな」
「……ごめんね、三条くん」
つい、口からこぼれた言葉に、三条くんははっとして口を閉ざした。目の奥がじわっと熱くなって、また、涙がこぼれる。
「わたし……、勝手だよね。マジモノ祓うって言ったり、やっぱり嫌だって言ったり」
「……まあ、そうだな。エナさんに振り回されているなとは、感じている」
「ご、ごめん……。でも、三条くんが来てくれたこと、すごくうれしくて……、さっき、すごく、怖かったから」
言葉がつまる。それでも、わたしは必死に伝えた。ぐちゃぐちゃな言葉でも、たぶん、三条くんは聞いてくれる。
「ほんとは、わたし、マジモノに頼ってちゃダメだって、思うんだよ。だけど、どうしても怖くて、不安で」
「不安? なぜだ」
「わたしには、最初から魅力なんてなかったのかもって、思うから……」
顔を伏せる。
握った拳に、涙がぽたぽた落ちた。
いままでみんなに好かれていたのが、ぜんぶ、マジモノのおかげだったら。本当のわたしは、だれからも好かれていなかったら。どうしたらいいんだろう。
「エナさん」
「なに……、うあっ⁉」
むぎゅっ。
突然、わたしは頬を三条くんの手に挟まれた。
はさまれた顔を、上に向かせられる。
あ、やばい。これいま、変顔になってる。
むぎゅって顔が変形してる。モデルとしてありえない顔だ。
……そう思いつつ、見上げた先にある三条くんの顔を見て、なにも言えなくなった。
「九重エナに、うつむいている姿は似合わない」
三条くんの澄んだ瞳が、わたしを見てる。
まっすぐな、きれいな瞳。
「大丈夫だ。エナさんは、マジモノがいなくても、絶対に平気だから」
ふっと、三条くんが表情を和らげた。
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