第十二章 マジモノ祓い!

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 わたしは、思いきり息を吸い込んだ。 「マジモノさんも、かわいいよ!」 『エ?』 「わたし、最初にあなたを見たとき、かわいいって、ついつい言っちゃったんだもん!」  マジモノはびっくりしたように固まった。 「おまじない任せはダメだけど、ひとから好かれたいってがんばる子は、かわいい! かわいくなりたいって、努力する子が、かわいくないわけないじゃん!」  ふわふわ浮いているマジモノを、今度は自分から、抱きしめる。  みんなみんな、かわいいし、努力すれば、いまより、もっとかわいくなれる。ズルしなくたって、いくらでも、かわいくなれるんだから。 「わたしは、わたしを信じてる。だから、もういいの」  ぎゅーっ。マジモノを抱きしめる。 「いままでありがとう。ここからは、自分で輝くよ」  マジモノを見つめて、にっこり笑顔を浮かべた。 『……ソウ』  マジモノはそれだけ言って、もう口を開かなかった。その代わり、わたしにしがみついてきた。  わたしは振り向いて、三条くんを見る。 「お願い。三条くん」 「ああ。――九重エナに憑いた、幻惑のマジモノ。ここに祓う」  そっと、三条くんがマジモノに手を伸ばす。 「封」  ふわっと、あたたかい風が吹いた。  マジモノが輝いて、だんだん、姿が薄れていく。  お母さんの優しいおまじないから生まれたマジモノ。  お別れはちょっとさびしいけど、でもわたしは、ひとりでも大丈夫。  わたしと三条くんに見守られて、マジモノは青い空に消えていった。  あとには、バニラの優しい香りが残った。
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