第十三章 クリアな世界

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「負けないよ、三条くん」 「おれも、エナさんには負けない」  どんどんどん、とバスケットボールが跳ねる。体育の時間。今日もバスケットボール。わたしは三条くんのチームと対戦することになった。 「ダサいメガネコンビの対決じゃん。ファイトー!」 「こら、ダサい言わないで! っていうか、もうわたし、メガネしてないし!」  周りからの声にべっと舌を出しながら、ドリブルして三条くんのとなりを駆け抜ける。すかさず三条くんが前に立ちはだかる。うっ、さすが三条くん。背が高いから、壁みたいだ。それでもわたしは、一気にスピード勝負で三条くんを抜いた。 「そーれっ!」  高く放り投げたボールは、がたん、とゴールを揺らす。 「エナちゃん、すごい!」 「いえーい!」  ほめてくれる女の子たちに、ブイっと指を向ける。それから、がっくりしている三条くんのとなりに立って、下からのぞきこんだ。 「メガネなくなったわたしは、無敵だぞ~、三条くん」 「……次は負けんぞ」  むっとした三条くんは、やっぱり負けず嫌いだ。ふふんと笑って、わたしは次のプレイのために駆け出す。三条くんをからかうのって、楽しいんだよね。 (あ。でも、マジモノがいなくなっちゃったら、三条くんはわたしに構ってくれないのかな)  もともと、マジモノが暴走するまで、わたしたちは仲よくなかった。同じクラスなのに、全然話したことなかったし。マジモノを祓うために、わたしのそばにいてくれたのなら、これからはどうなるんだろう。  るんるん気分に、影がさす。 「エナちゃん、横!」 「え? うわあ……!」  三条くんがメガネをかけているとは思えないはやさで、わたしを抜いてゴールに走っていく。ピピっと、ゴールが決まった音が鳴った。振り向いた三条くんが、誇らしそうに笑う。 「油断は大敵だぞ、エナさん」 「……やってくれんじゃん!」  ぴしっと青筋を浮かべたわたしは、三条くんの腕をがしっとつかむ。 「む⁉」 「……三条くん。話あるから、今日はいっしょに帰ろ」  うじうじ悩むのは、もうやーめた。いまの九重エナは、無敵なんだから。にこっと最上級のスマイルを浮かべる。 「そうか。わかった」  ……相変わらず、冷たいな、三条ソウマめ。  この笑顔でもダメなの?
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