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「負けないよ、三条くん」
「おれも、エナさんには負けない」
どんどんどん、とバスケットボールが跳ねる。体育の時間。今日もバスケットボール。わたしは三条くんのチームと対戦することになった。
「ダサいメガネコンビの対決じゃん。ファイトー!」
「こら、ダサい言わないで! っていうか、もうわたし、メガネしてないし!」
周りからの声にべっと舌を出しながら、ドリブルして三条くんのとなりを駆け抜ける。すかさず三条くんが前に立ちはだかる。うっ、さすが三条くん。背が高いから、壁みたいだ。それでもわたしは、一気にスピード勝負で三条くんを抜いた。
「そーれっ!」
高く放り投げたボールは、がたん、とゴールを揺らす。
「エナちゃん、すごい!」
「いえーい!」
ほめてくれる女の子たちに、ブイっと指を向ける。それから、がっくりしている三条くんのとなりに立って、下からのぞきこんだ。
「メガネなくなったわたしは、無敵だぞ~、三条くん」
「……次は負けんぞ」
むっとした三条くんは、やっぱり負けず嫌いだ。ふふんと笑って、わたしは次のプレイのために駆け出す。三条くんをからかうのって、楽しいんだよね。
(あ。でも、マジモノがいなくなっちゃったら、三条くんはわたしに構ってくれないのかな)
もともと、マジモノが暴走するまで、わたしたちは仲よくなかった。同じクラスなのに、全然話したことなかったし。マジモノを祓うために、わたしのそばにいてくれたのなら、これからはどうなるんだろう。
るんるん気分に、影がさす。
「エナちゃん、横!」
「え? うわあ……!」
三条くんがメガネをかけているとは思えないはやさで、わたしを抜いてゴールに走っていく。ピピっと、ゴールが決まった音が鳴った。振り向いた三条くんが、誇らしそうに笑う。
「油断は大敵だぞ、エナさん」
「……やってくれんじゃん!」
ぴしっと青筋を浮かべたわたしは、三条くんの腕をがしっとつかむ。
「む⁉」
「……三条くん。話あるから、今日はいっしょに帰ろ」
うじうじ悩むのは、もうやーめた。いまの九重エナは、無敵なんだから。にこっと最上級のスマイルを浮かべる。
「そうか。わかった」
……相変わらず、冷たいな、三条ソウマめ。
この笑顔でもダメなの?
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