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放課後、わたしたちは約束どおりに並んで歩いた。夏の陽ざしはやっぱり暑い。きらきらまぶしい光が、三条くんの髪を輝かせた。きれいなんだよなあ、三条くん。
「マジモノのお祓いしてくれて、ありがとうね」
「いや。断ち切ったのは、エナさんのがんばりだ」
「えへへ~。それほどでも」
「マジモノを抱きしめるひとは、はじめて見た。度胸があるな」
「そんなにほめても、にっこりスマイルしかあげられないぞ~」
でも本当に、三条くんがいなかったら、ダメだった。マジモノを頼って、おびえて、部屋にとじこもっている生活が続いたと思う。
「……三条くんはさ、これからもマジモノのお祓いをするの?」
「それが仕事だからな」
「へー。大変だね」
「エナさんのモデルの仕事と同じだ。おれも、好きでやってる」
そっかあ、とわたしはランドセルの持ち手をぎゅっと握る。じゃあ、これからも三条くんは、マジモノに憑かれたひとのためにがんばるんだね。わたしにしてくれたみたいに、だれかに優しくするんだ……。
「やだなあ、それ」
つい、ぽつりと言っていた。
「なにがいやなんだ?」
「んー……、ねえ、三条くん。わたしも、手伝っていい? お祓い」
「エナさんが?」
「うん」
目を見開く三条くんに、わたしは深くうなずく。
「だって三条くんさ、ちょいちょい失礼じゃん」
「……うむ?」
「マジモノのお祓いって、憑かれちゃった本人と協力しなきゃいけないよね」
ここで復習。マジモノのお祓いには手順がある。
① マジモノを生んだおまじないについて知る。
② 三条くんがマジモノを引きはがす。
③ 憑かれた本人がマジモノを断ち切る。
おまじないを知るのも、断ち切ってもらうのも、マジモノに憑かれた子に協力してもらわないといけない。でも。
「三条くん、ちょいちょい失礼じゃん」
「二度も言うな。……おれは、そんなに、失礼なことを言っただろうか」
「うん、言った言った。だって何回か、わたしとケンカしたでしょ」
うっ、と三条くんがうなる。
「その節は、すまなかった」
「あはは、いいよ。気にしてない」
……ちょっと失礼なところもあるけど、ほんとは三条くんが優しいひとだって、わかってる。でもいまは、ごめんね、ないしょ。
「わたし、コミュ力高いよ。すぐ初対面の子と仲よくなれる。あと度胸もある」
「それはそうだろうな」
「でしょ。それから運動得意だし。かわいいし」
「かわいさはお祓いには必要ないが」
「と、に、か、く! わたし、お買い得だと思うよ?」
ね、と三条くんをのぞきこむ。
「わたしがいると、マジモノのお祓い、サクサク進むと思うなあ。ケンカも起きないと思うよ~?」
だからお願い、これからもわたしといっしょにいて。
さすがに、そんな言葉は言えないけど。
じーっと三条くんを見つめる。はなのん相手だったら、これでもう真っ赤になって、コクコクうなずいてくれると思う。でも三条くんは手ごわい。
うむ……と困ったように黙り込んでしまう。たくさん悩んで、三条くんはとうとう言った。
「マジモノは危険だから、あまり関わってほしくはないが……」
ないが?
「エナさんは体力もあるし、おれとはちがって明るいし……、手伝いを頼めるだろうか」
っしゃ、と内心でガッツポーズ!
「任せて! わたしがいれば、楽勝だよ!」
「……いつも思うが、その自信はすごいな」
呆れたような三条くん。
でもわかってる? わたしに自信をくれたのは、三条くんだよ?
いつか、そのお礼もしないとだね。
んー、とわたしは大きく伸びをする。わたし、これからも三条くんのそばにいていいんだ。それだけで、ぽわっと心があったかい。
でももう一個、やりたいことが残ってる。
「ね、三条くん。今度の土曜日、空けておいて!」
「なぜだ?」
「当日まで、ないしょ」
わたしはいたずらっぽく笑ってみせた。
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