【第一章 一節 世界一事故率の高い街】

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「ーーーーーーっ!!」  帰り道、階段を降っていた途中からの浮遊感。通学路のホームの階段で誰かに足をかくんと蹴られてバランスを崩した。  落ちる。  頭に鮮明に浮かんだ数日前の記事。電車のホームで足を踏み外して死ぬ”事故”のことだ。長く高い階段から足を踏み外して転がる、死ぬ、転がる、死ぬ。私がーーー死ぬ!!  助けてとか悲鳴とか何もあげることが出来ずに人がまばらなホームを転がる。階段の出っ張りに脛をぶつける。グキリという音。よろめきながら手すりにぶつかる。  嫌われたら、要らないと思われたら死ぬんだ。知識としてはそう知って生きてきた。でも、私は死にたくないーー!!!!!  三度目の痛みを覚悟した瞬間に声がした。 「あらあら。危ないお嬢様ですこと」    痛みが来ない。ぎゅっとつぶった目を恐る恐る開いて見えたのはふわふわの茶色の髪だった。
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