【第一章 一節 世界一事故率の高い街】

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【第一章 一節 世界一事故率の高い街】

 ーー彼らとの出会いについて話すには、まず、二週間前のこの事件を語らなければならない。  私、伊瀬知 美柑(いせち みかん)は由緒ある私立後藤嶋女学院に通う二期生である。肩まではない橙のショートカットの髪と、低身長で小柄な体を持つ一般的な女子生徒と言っても良い。  そして、目の前に居る少女は笹目マリ。黒髪セミロングのパッとしない容姿で、眼鏡をかけた大人しい彼女を私は引き立て役として十分に利用させて貰っていた。  私達は校内のカフェでもうすぐ行われる生徒会役員選挙に向けて、ポスターを作っている。 「カスミちゃん、もう一週間経ったね」  これは何度も聞いた話題だ。私の友人の斎藤カスミがどうやら"事故"に遭ったらしい。自動運転の車に運悪くぶつかって海へ転落したとのことだ。  しかし、奇妙なことにネオ東京02で死亡した際に政府から告知される”死亡通知書”が公表されていないのだ。だからと言って、死んでいないとは思えないのだが。 「もう絶望的よ。ネオ東京02で居なくなったなら、死んじゃってる。だってここは、世界一”事故率”の高い街ーーネオ東京02なのだから」
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