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「しかし、コイツは本当に伊瀬知智蔵の娘なのか?
そんなエラい奴の娘が二区に来てることなんてあり得ないだろう」
「これを見ろ。伊瀬知美柑と書かれた一区の身分証だ。どうやら本当に都落ちで来ているらしいぞ。本部の奴らが大騒ぎしていたからな。殺し甲斐のある奴が来たって」
私の身分証とポーチは巡り巡ってどうやらこの集団のもとにもたらされたらしい。古市にないわけだとぼんやり思った。......ぼんやりと思わざるを得なかった。
このぼんやりしたモヤのようなものを手放せば、たちまち恐怖で身体が震え上がってしまうだろう。
(痛い......寒い......)
衝撃で鼻血が出ているらしい。拭うことも出来ずに不快感だけが蓄積されていく。悪寒は何から来ているのか。熱か、それとも恐怖か。
私は死にたくなかったけれど、どうやらここでおしまいになるらしい。殺し屋に殺されるときは、一瞬で殺してくれるのだと思った。けれど、この人達は私が痛がる様を愉しんでジリジリと時間をかけて殺すだろう。
後悔はしたくない。
心が折れて、今までの選択を自分で悔いる前に早く殺してほしいとすら思う。
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