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(勅使河原先生、無事に逃げられたかな。逃げられてて欲しいな。せめて私の分まで)
死ぬならば私が存在していたこと、生きていたことが何かを変えるキッカケになっていて欲しい。それが何者でもない私の贅沢な願いだ。
「おい、コイツ起きてるぞ。例のヤツが到着する前にちょっと遊んでおこうぜ」
焚き火の前からこちらに移動してくる男が居る。加虐性のある瞳だ。この瞳を私は何度も見たことがある。
(お父様の関係で昔から恨まれることは多かったもの。今までは誰も私に手出しできなかったけれど、今回は違う......)
振り上げられた拳に堪らず私が目を瞑ったとき、甘ったるい声が割り込んできた。
「もし、あたしは布売り。お兄様方、服は要りませんかー?」
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