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息が切れるほどに走ることは日常生活では殆どなかった。女学院ではお淑やかさを求められるし、運動の才のないものは日常的に走り込んだりなんかしない。
「はぁっ......はぁっ......」
金島カナヱに任せて大丈夫だったのだろうか。置いてきて良かったのだろうか。まとまらない思考を無理やり置いて、今はひたすら走る。
「......ゲホッ......」
慣れていないせいで呼吸がうまく出来ない。あれからどのくらい走っただろうか。足がもつれそうで、それでも走らなければならなくて、辛い。肺が痛む。喉が悲鳴を上げる。それでも、生きたい。
生きて、普通の生活がしたい。
「おいっ! 待て!!」
「きゃっ!」
あれ程にまで一生懸命走ったのに、先ほどの5人のうちの1人に追い付かれてしまった。強く肩を掴まれて転ばされる。地面の泥の味がして、見上げると、腕に切り傷のある男が般若の形相で私を見下ろしていた。
(所詮私は落ちこぼれ。ここまでだって言うの?)
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