【第一章 一節 世界一事故率の高い街】

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「殺し屋だったら形跡があるはずなのに」 「監禁とかされてるのかも」 「いや、ただの欠席のカモフラージュかもよ?」 「通知書がない人間が2人も出るなんて異例だわ」  誰の口から放たれたかわからない言葉が錯綜する。ネオ東京02内では明確であるはずの生死が笹目マリに関しては揺れている。笹目マリは私と話した帰り道に忽然と居なくなったらしい。  学生の中ではある噂が広まっている。私ーー伊瀬知美柑が斎藤カスミと笹目マリを”事故”に遭わせた、と。  根拠として、両名がいなくなる前に私との口論が目撃されたことがあげられているらしい。私はまるで奇病感染症患者に向けられるような胡乱な視線を受けながら、放課後まで過ごすことになった。  ホームルームの後、私は職員室に呼ばれていた。 「で、結局どうなんだ。伊瀬知。この規律正しい後藤嶋女学院で”事故”を起こすなんてとんでもないことだぞ」
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