【第二章 六節 決断】

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【第二章 六節 決断】

 マオが私を案内したのは、洞窟だった。 「諸々手配は済ませました。明日一番の貨物列車に乗れば、一区に帰れますよ」 「そう.......なの」 「通常、俺たちのような職業の者でも二区から一区へは易々と行き来出来ません。紀香さんの伝手に感謝してくださいね」  これで良いはずなのだ。表には出せないルートで準備してくれた電車で、私は一区に帰れる。後藤嶋女学院でまた生徒会選挙の準備をして、危険はあるかもしれないけれど、マオが守ってくれる。  そして生徒会選挙で成果を残せば、命を狙われる状況からも逃れられるチャンスがあるのだ。 「そうだ。マオ、お礼を言っていなかったわ。ありがとう。助けに来てくれて」 「仕事ですから」 「それでも私、嬉しかったから。二区に来て心細かった。死んでしまうのは、やっぱり怖いよ」 「お礼、言えるようになったんですね」  私達の関係は出会った頃よりは幾分かマシになっていて、私は彼の少し嫌味な言い方に悪意がないことに気が付き始めていた。悪意がない分、心に刺さるけれど。
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