【第二章 六節 決断】

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(勅使河原先生は無事に逃げられたかな)  先生は明日の投票で何かをするつもりだ。最後まで見届けられなかったのは残念だけれど、私が居たところでできることは何もない。 「ここで夜を明かします。この洞窟であれば外に音も漏れませんからゆっくり休めますよ」  試しにマオは持っていたナイフで灰色の壁を強く削った。カンテラ越しに粉末がパラパラと落ちるのが見えた。特徴的な銀の煌めき、間違いない。 「これ、銀粒粉だわ」 「銀粒、確か手軽に銀を付与出来るネオ東京02の特産でしたよね。でも、銀は精製しなければ光らないので間違いでは?」 「ううん。銀粒は銀から作られる訳じゃない。銀粒粉を化学反応させてつくるの。そうするとあたかも本物の銀のように見えるから銀粒と呼んでいるだけ。正式名称は第十三種ネオ東京02物質。奇病感染症が広まって、ネオ東京が作られてから発見された新しい物質よ」  マオは興味なさげに”そうですか”と相槌をうって、寝具を広げだした。一方で私はプルプルと足が震えた。このことが大きな意味を持つことを知っているから。 「行かなきゃ」 「はい?」
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