【第二章 六節 決断】

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「そして貧しくなったこの地区を一番のターゲットに”一区で奴隷として強制労働をするなら命だけは助けてやるぞ”と強制労働法を起案したのですから、恨まれない筈がない」  お父様のお仕事について、私は深く知りはしなかった。他人であるマオの方が詳しいだなんて、恥ずべきことだ。  それに私はここで一つの可能性に気がついてしまった。 「もしかして、御手洗いで私を捕まえた殺し屋の人は”私が伊瀬知智蔵の娘だから”ここに落とした......?」 「可能性はあるでしょう。身分証を敢えて奪わずに落としたのなら、ここで伊瀬知さんの身元が割れることさえも計算尽くだったかもしれません」  そうであれば、あのゴミ捨て場でポーチを奪われず、持っていたとしたら。古市や金島カナヱの前でフルネームを明かしていたらーー。背筋が凍った。
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