【第二章 六節 決断】

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「俺は伊瀬知智蔵のビジネスや施策が必ずしも悪だとは言えないと思います。衰えた産業に対して何も自助努力をせず、落ちていったのはこの地区の住民の自業自得です」  一つ、マオについてわかったことがある。マオは成果や努力を重視する。決してその場で足踏みをする人間を救ったりしない。  でも、私は止まっていた側の人間だ。一区で落ちこぼれて、要らないと言われて、殺されかけて。それでやっと今、歩き出したところ。 「ねぇ、マオ。私は優秀じゃないから、必ずしも正解の道ばかりは歩けない。この地区の人達に立ち上がるチャンスがあるなら、それを応援したいと思ってる」 「......。」 「怖くないかと聞かれれば怖い。殺されるのは嫌。でも、お父様が起こしたことでこの地区の人達が不利益を被ったのなら、娘として責任を感じているわ」 「......今回の二区強制労働法は伊瀬知議員の肝入りの政策です。伊瀬知さんの実名がバレれば親子関係にヒビが入るかもしれませんよ」
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