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担任は公平な立場から物事をみたいからということで私を職員室に呼んだ。この後藤嶋女学院はネオ東京02第一区の中でも富裕層向けの私立女学院だ。風評被害は困るのだろう。
「私は何もしていません。それに事故には死亡通知書がセットでしょう?」
「いや、何も僕は伊瀬知を疑っているわけじゃない。だが、生徒の中には伊瀬知家ならやりかねないという声もあってだな」
伊瀬知家はここ20年で急速に力を付けてきた成金である。父の伊瀬知智蔵(ともぞう)は厳しい経営手腕でのし上がってきたと聞いている。今では議会にも進出し、力を持っている。ここの学生の親の中にもお父様に一泡吹かされたという人は多い。けれど、忙しいお父様が私のために何かをするとは思えない。
「伊瀬知家は関係ありません」
「そうは言ってもな。お前、生徒会に立候補してただろ。立候補には応援演説員が必要だ。あれから伊瀬知家に関わりたくないと言って、誰も斎藤や笹目の代わりの応援演説員をやりたがらないんだ」
生徒会。そんなのもあったなと冷たい目を向ける。
「とにかく、濡れ衣です。失礼します」
「おい、伊瀬知!」
馬鹿馬鹿しい。斎藤カスミも笹目マリも誰かが殺したというのなら、ネオ東京02が殺したのだ。私の知らないところでヘイトを溜めて処刑されただけ。ただの都市の自浄作用だ。だから私は関係ない。
ーーそう思っていた。
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