第6章 オルダの生活

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 オスルとオルダに戻ってきたら、タンジュがユルトの前で待っていた。 「おかえり、リャオリン」 「タンジュこそおかえり。もう放牧から戻ってたんだ」  タンジュに会えると嬉しくてにこにこしてしまう。 「さっきな。楽しそうだな」 「去年の立射の話を聞いてたんだ。ウムリが間違えて隣の的を射たけど、それがど真ん中に当たってたって話。優勝はタンジュだったんだって?」  タンジュはうなずく。兄弟そろって弓は得意だ。 「もうすぐ夏の集会があるんだろ?」 「ああ、同盟部族が集まるんだ」  集会では色々な問題を話し合ったり、騎射や早駆けなどの腕を競い合ったりするという。 「オスルも騎射に出たいって言ってた。練習も見せてもらったよ」  馬で駆けながら弓を射るだけでもすごいのに、的に三つも当てるなんて遼玲から見れば神技だ。  「そうか。オスルとよく話すのか?」 「うん、いい子だね。おれのわかる言葉で色々話してくれる」  言葉が通じなくても子供たちが親切に面倒を見てくれるので、日常生活はなんとかなっている。オスルは最年長で子供たちのリーダーだ。 「力仕事もすごくやってくれるし、親切だよ」 「ふうん。オスルはそんなに親切なのか」 「うん。アリマ様もそろそろ一人前だって言ってたし、みんなに頼りにされてるよ」  タンジュがなぜか不機嫌そうになったので、遼玲は急いで付け加えた。 「アリマ様はタンジュのことも頼りにしてると思うよ、とても」  母親が下の子をかわいがることは現代でもよくあることだ。同母の弟が母親に頼りにされていると聞いて、タンジュは嫌な気持ちになったのかも。 「そりゃそうだけど」  不可解そうな顔で遼玲を見つめている。  あれ? なんか間違えた?  違和感を感じたが、タンジュは別のことを口にした。 「馬の練習をしようか」 「うん」  草原の馬は気性が荒い。もともと野生馬を飼いならしたものだし、戦場では気の強い馬が求められるからだ。 「ソロルとは相性がいいみたいだな」 「うん。ソロルが懐いてくれてよかったよ」 「よしよしソロル。リャオリンをしっかり守るんだぞ」  遼玲を侮っている馬は乗せてくれてもそっぽを向いて、行きたい方向に行ってくれないのだ。  子供たちが夕方の乳搾りをしている。その周囲をゆっくりと走らせる。最初よりはだいぶ乗れるようにはなった。  タンジュと馬の練習をする遼玲をウムリは冷たい目で睨んでいた。
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