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オスルとオルダに戻ってきたら、タンジュがユルトの前で待っていた。
「おかえり、リャオリン」
「タンジュこそおかえり。もう放牧から戻ってたんだ」
タンジュに会えると嬉しくてにこにこしてしまう。
「さっきな。楽しそうだな」
「去年の立射の話を聞いてたんだ。ウムリが間違えて隣の的を射たけど、それがど真ん中に当たってたって話。優勝はタンジュだったんだって?」
タンジュはうなずく。兄弟そろって弓は得意だ。
「もうすぐ夏の集会があるんだろ?」
「ああ、同盟部族が集まるんだ」
集会では色々な問題を話し合ったり、騎射や早駆けなどの腕を競い合ったりするという。
「オスルも騎射に出たいって言ってた。練習も見せてもらったよ」
馬で駆けながら弓を射るだけでもすごいのに、的に三つも当てるなんて遼玲から見れば神技だ。
「そうか。オスルとよく話すのか?」
「うん、いい子だね。おれのわかる言葉で色々話してくれる」
言葉が通じなくても子供たちが親切に面倒を見てくれるので、日常生活はなんとかなっている。オスルは最年長で子供たちのリーダーだ。
「力仕事もすごくやってくれるし、親切だよ」
「ふうん。オスルはそんなに親切なのか」
「うん。アリマ様もそろそろ一人前だって言ってたし、みんなに頼りにされてるよ」
タンジュがなぜか不機嫌そうになったので、遼玲は急いで付け加えた。
「アリマ様はタンジュのことも頼りにしてると思うよ、とても」
母親が下の子をかわいがることは現代でもよくあることだ。同母の弟が母親に頼りにされていると聞いて、タンジュは嫌な気持ちになったのかも。
「そりゃそうだけど」
不可解そうな顔で遼玲を見つめている。
あれ? なんか間違えた?
違和感を感じたが、タンジュは別のことを口にした。
「馬の練習をしようか」
「うん」
草原の馬は気性が荒い。もともと野生馬を飼いならしたものだし、戦場では気の強い馬が求められるからだ。
「ソロルとは相性がいいみたいだな」
「うん。ソロルが懐いてくれてよかったよ」
「よしよしソロル。リャオリンをしっかり守るんだぞ」
遼玲を侮っている馬は乗せてくれてもそっぽを向いて、行きたい方向に行ってくれないのだ。
子供たちが夕方の乳搾りをしている。その周囲をゆっくりと走らせる。最初よりはだいぶ乗れるようにはなった。
タンジュと馬の練習をする遼玲をウムリは冷たい目で睨んでいた。
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