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現実世界7
突然、美月ちゃんが持っている鏡の欠片が光った。私はなぜか、胸がキュンとしめつけられた。
「あっ、これ……」
美月ちゃんは鏡を見ると、一瞬悲しい顔をした後、すぐにいつもの笑顔で私に抱きついて来た。
「ぎゅーっ!」
「美月……ちゃん……? ねぇ、その光……」
「うん、これね、たぶん成仏チャンス、来ちゃったかも」
美月ちゃんは私を抱きしめたまま離さない。
「そ、そんな……!」
「結衣は大丈夫っ! もうお友達もいる。」
「嫌……! 嫌っ! 嫌だよっ! 美月ちゃん! 行かないで……!」
美月ちゃんは私の両肩に手を当てて、目を見つめる。美月ちゃんも泣いていた。
「私も嫌だ……でも行かなきゃいけないんだ。誰にでも、いつかお別れが来るの。誰にでも、いつか……」
私は言葉を紡げないほど嗚咽し、泣いた。ただ美月ちゃんの最後の言葉を聞くしかない、その受け入れ難い現実に潰されそうになっていた。
「だから、結衣は今を生きて、誰よりも輝いて生きて。それだけが、私の願いだから……」
「……わかった…… わかったよ、美月ちゃん……大好き……」
「私も、世界の誰より大好きだよ、結衣ちゃん!」
そう言って私の初めての友達は、目に涙を溜めながら、それでも、いつもの素敵な笑顔で笑った。
美月ちゃんは光の粒子になった。ゆっくりと、ゆっくりと、鏡の中へ吸い込まれていく。
「ありがとう…… 美月ちゃん……」
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