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許可
すでにアリスは国王である父に、ルナの近衛兵入りの許可を取っていた。
「テオからの報告は聞いている。実力は確かなのだろう」
「はい。出来れば私の側付きにしたいと」
「近衛兵は男性ばかりだしな。女性がいた方が何かとアリスにとっても都合が良いだろう」
「ありがとうございます、お父様」
国王の悩みはさほど多くはなかったが、自分のどうしようもない娘への溺愛ぶり、いや、溺愛とも少し違う何か抗えぬ力のようなもの、それが悩みの一つではあった。だが、それが何かはわからずにいた。
「だが、どうしてそこまでルナという娘に固執するのだ。それに強いとは言うが、暴漢に襲われた所をお前に救われたのだろう」
「……はい」
「はぁ……。ならアリス、お前の方がよほど強いではないか」
「彼女はとても真面目なのです。剣を握れば剣士となり、鍛冶場に行けば職人となり、接客をすれば店番を頑張る一人の娘となるのです。だからお客様に対して必要以上に警戒を出来ない。いえ、しなかったのです」
「そうか……」
「ルナが近衛兵となれば、第一の使命は私の警護、そしてそれはルナ自身が死んでは成し得ません。そういう立場になれば、ルナは全力で自分の身を守れるでしょう」
「もちろん反対する理由はないが、アリス、それは質問に答えてはいないぞ。なぜそのルナという少女に固執する?」
「それは……。わかりません」
アリスもまた、自分の抗えぬルナへの気持ちを整理できていなかった。友情?恋?所有欲? 何かそれ以外の力が働いている気がしていた。
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