開始の号令

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開始の号令

 団長による開始の号令が響き渡る。  3人で1人を取り囲む。本気と言われても、通りから見える場所で万が一、本当に少女を切ってしまったら……という考えが浮かぶ。元貴族の家系である護衛の兵士は、実際に人を斬った経験はなかった。 ――だが、世界最強と言われる近衛兵団団長が本気でやれと言った……。もし本気を出さなければおそらくバレてしまうだろう……。  そのような迷いがあったのは一人だけであった。他の二人は実際に人を殺したことがある荒くれ者だ。  体格の両極端な荒くれ者の二人が、前後から同時にルナに斬りかかる。ルナは剣を剣で受けず、二人の間から回避した。危うく相打ちになる格好で二人の荒くれ者が見合わせる。ルナは涼しげな顔をしていた。 「クソガァ!」  腹の出た荒くれ者が、剣をブンブンと振り回す。それらを全てかわし、ルナは剣を一度だけ振った。  パキィィン!  腹の出た荒くれ者の剣は根本から切断された。 「バカな……」 「残りのお二人、どうぞ。」  汗一つかかずに、ルナは他二人の方へ剣を向ける。  呆気に取られた男たちの代わりに声を発したのはテオだった。 「ルナさん、あなたはいつも受け流してばかりだ。攻撃を見せてくれないか?」 「わかりました」  キィィン!!  剣の音が鳴る。その音と共に太陽が遮られる。上空を見た貴族出身の兵士は、ルナが宙を舞い、自分に斬り込もうとしているのを見た。  彼女の後方では、ルナが通りすがりざまに弾き飛ばした二人目の犠牲者の剣がふわりと宙に浮いていた。彼はまだ自分が敗北したことにも気がついていないようだった。 ――殺される……!!  元貴族の兵士は三人目の犠牲者となる前に剣を落とした。
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