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金髪の美少女
ガタン、ガタン、ガタン!
「ルナさん、いる?」
男達によって内側から鍵が掛けられていてハッキリと聞こえないはずなのに、外にいる少女の声は明るく聡明で、それでいて上品であることがわかった。
「ち、この時間は人がいないと思ったのに」
「どうする?」
「騒がれたら面倒だな」
「マジかよぉ、これからだってのに……」
「助け…て……」
ルナは男達にすら聞こえるか聞こえないかという微かな声を振り絞った。
黄金の滝を思わせる美しい金髪に、青く輝くサファイアの瞳。その少女は深く外套を被っているにも関わらず、不思議と有り余る存在感を醸し出していた。
だが、ルナの悲鳴を直感的に感じ取った少女の青い瞳は、怒りによって一際大きくなり、彼女の周囲の物体は電撃が走ったかのように騒めき、それはもはや存在感という言葉では表せない、大きなエネルギーの塊となった。
バァァァン!
一閃、鍛冶屋の戸が吹き飛び、粉微塵に消えた。高音の落雷のような激しい爆発音。
せっかくの獲物を食う前に邪魔が入り、仕方なく逃げ去ろうとしていたハイエナの背中と、床に力無く倒れている鍛冶屋の少女が写真のように固まっていた。
「ルナさん!」
少女が駆け寄り、ルナを抱きかかえる。頭まで被っていた外套が脱げて、美しく流れる黄金の滝が揺れた。
あまりの爆音と衝撃波に驚き、止まっていた5人の男達の時間が再び動き出し、裏口へ向かって歩き始める。
「待ちなさい」
男達は当然、待つ必要などなかった。しかし、なぜか足が止まる。
――魔法? いや違う、なんだ……?
その少女に跪けと命じられたら9割の人間は喜んで跪くだろう。残り1割の人間も、嫌な気はしないだろうと思わせるほどに、不思議な声の持ち主だった。
「何をしていたのですか」
「……」
「いえ、答えなくて結構」
それは一瞬だった。再び青い瞳が大きく見開かれ、圧縮された空気のような何かが少女から放たれる。ミシミシッと少しだけ床が軋み、カチャッと店内の剣や武具が小さく音を立てただけだったが、
「アばドぅブッッ!」「ゥギャァ」
「ぶハァぉェ!」「ほブゥぉ!」「ンヌっ」
男達は全員その場に倒れた。
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