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現実世界
キーンコーンカーンコーン
私に初めて昼休みに話す相手、というか、友達…が出来た。友達と言っても私が勝手にそう思っているだけかもしれない。私は小学校から中学卒業まで友達が出来たことはなかったから、これが本当に友達なのかはわからないけど、きっと友達だと思っている。
美月ちゃんはいつも黒くて長い髪に、白いワンピースを着ていて、見た目は私と同じ高校生くらい。私にしか見えないし、触れない。友達が欲しすぎるあまりイマジナリーフレンドが見えるようになってしまったのかと思ったけど、美月ちゃんは幽霊だった。
「幽霊って、何か原因があって成仏出来ないっていう感じの…アレだよね?」
幽霊さんに身の上話を聞くのは非常にセンシティブな気がしたので、自分なりにタイミングを考えて、勇気を振り絞って質問してみた。
「そうそう、そうなんだけど全く記憶がないんだよね。美月って名前しか覚えてなくて。幽霊って『恨めしやー』って言うけど、何を恨めばいいかもわかんない」
そう言って明るく笑っている。正直なところ私は成仏なんてして欲しくない。美月ちゃんがいなくなることを考えただけで心が苦しくなる。
「どーしたの、結衣?」
そう言って私を後ろから抱きしめる温もりは、幽霊だということを全く感じさせない。
きっと美月ちゃんの方が辛い目にあって幽霊になってしまったのに、いつも私が励まされている。その上成仏する事を望まないなんて勝手な事を考えている……。
美月ちゃんはもう少しだけ強く私を抱きしめてくれた。
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