王城

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王城

 無愛想な鍛冶屋の看板娘は目を覚ましたが、枕が膝枕だったことに気がつくまで10秒ほどかかった。なぜなら目を開けた時にまず入ってきたものが、完全におとぎ話に出てくるお城の中そのものだったからだ。 「あ、起きた?」  青くて大きな瞳がキラキラと覗き込んでいる。 「ほらー!やっぱり王子様のキスで目覚めるんだよー!クロエ! あ、王女か!」 「まぁ、たまたまでしょうけど……。お目覚めになられましたね」 「もう3日だもん、ダメかと思ったよ……」  金髪で青い目の少女は、どうやら鍛冶屋を訪れた単なるお客様ではないようだった。歳はルナと同じか、それよりも少し幼く見えた。そしてクロエと呼ばれた女性は20代前半くらいのメイドのように見えた。 「あ、あの……」  ルナはむくりと起き上がり、感謝の気持ちを伝えたかったが、言葉と同時に出てきたのは涙と、身体の震えだった。  金髪の少女がルナを強く抱きしめる。 「いいんだよ。気にしないで。」
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