Epilogue

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Epilogue

この夏は暑かった。 ニュースでは史上初の暑さだとか言われる中、僕は態々外に出た。 少しでも暑さを凌ぐためか、はたまたただの気分か。 自分でもよく分からなかったが、何故か、勝手に足が海へと進む。 まるで、逆らえない運命かのように。 海へ着くと、浜辺に一人の少女がいた。 白いワンピースに、瑠璃色の少しヒールのある靴を履いていた。 そして、僕の気配に気づいたのか、彼女の大きな眼が此方を向いた。 思わず目を背けてしまったが、すぐに目線を彼女の方に戻した。 すると、彼女は何故か微笑みながら僕を自分の方へ招いた。 勝手に身体が彼女の方へと向かっていた。 そして、ストンッと彼女の隣に座った。 「...私、元気だよ。」 急にそう話しかけてくる彼女。 初対面だよな、と思いながらも何故か心には懐かしさが浮かぶ。 と同時に涙が出てきそうなほどの悲しさが僕を襲う。 自分でも何がなんだか分からなかった。 「...は、なんで...」 思い出してしまった。 懐かしくて、悲しくて、恋しい、あの思い出。 「私、元気になったら美園とデートする!」 二年前、僕にそう言った彼女が脳裏に浮かんだ。 「美園、あのね...私、美園が好きなの...」 「美園っ、私、元気だよ。」 「...美園は元気、?」 そこで眼が覚める。 ああ、なんだ、夢か。 そうは思いつつも、泣き叫びたい感覚があるのは何故だろう。 ましてや、忘れたと思っていた彼女が夢に出てくるなんて、 「はは...呪いかよ、」 そう呟きながら僕は重たい身体を起こした。
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