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 このままじゃ顔まで赤くなりそうで、私は不自然に目を逸らして下を見た。 「な、なんか、兄が気に入ったお店のポイントカードを渡したかったみたいです」 「ポイントカード?」 「はい、ポイントカードです」 「…それを渡す為だけに家来たの?」 「そうみたいです…」  ビルのエントランスで「お願いお願い!まじで今日渡さないと今後の人生に影響出ちゃうやつだからさ!サムはもう会社出ちゃったし、ふみちゃんち行かせて!」と懇願されて、兄の人生を心配した私は渋々了承したのだけど。  まさかポイントカードを手渡すとは思わなかった。  それが今後の人生に影響出ちゃう代物なの…?と思いながら、あの時はドン引きして見ていた。  もしかすると若生さんもドン引きしているのかもしれない。  眉間に浅い皺を刻んだまま、アメリカーノの水面を見つめている。  今のうちにとばかりに伏せられた目元を観察して、殺傷レベルの色気だっぺなぁ…と唾を飲み込んだところで、若生さんが急に視線を上げた。  パチッと目が合ってしまうと、思わず空気をキュッと飲み込む。 「登坂とは仲いいの?」 「えっ!いえっ、全く」 「最近よく来てるみたいだし」 「コーヒーの気分なんだと思います。あの、本当に、仲良くないです」  返事をしながら視線から逃げるように下を向いた。  話しているうちに昨日のことを思い出して一人勝手に気まずくなったのだ。  昨日、登坂さんと渋々一緒に家に向かう時、私は心の底から思っていた。  ああ、登坂さんじゃなくて若生さんだったら良かったのにと。  そう強く思ってしまうってことは、私は若生さんに対して抱かれたい男ナンバーワン以上の気持ちがあるんじゃないかって。  それって好きってことなんじゃないのって。  いやいや、そもそも、抱かれたいって思う時点でそれは好きってことだ。  抱かれたいが好きではないってパターンもあるとは思うけど、恋愛未経験の私にそんなハードル高めな思考などできるわけがなくて。  つまり、私は若生さんを抱かれたい男ナンバーワンに認定した時点で、すでにこの方に恋してたんだな、と。  ようやく自覚したわけなのだ。
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