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そうして、若生さんへの恋心を告白した。
その手の経験が皆無なせいで、身の振り方がまるでわからないんだと説明しながら、こんな話をしても兄を困らせるだけかもしれないとすぐに思い改まっていた。
兄も私と境遇が似た、恋愛経験のない童貞ではないか。
ずっと畳に向けていた視線をあげると、兄は腕を組んで眉頭を寄せ、うんうんと聞いている。
困惑したような表情をしていると思ってたのに、恋愛系に精通しているような雰囲気があり、私が困惑した。
「ご、ごめんね。変な相談して。困っちゃうよね…?」
「ううん。相談してくれてありがとう。ふみの気持ちはよくわかったよ」
「えっ。わかったの?」
「ふみ。僕はね、そこら辺の経験値は最近爆上がりなんだ。ふみよりは経験豊富だから、いいアドバイスができると思う」
私は目を瞬いた。
何を言っているんだと思った。
やっぱり兄の魂は誰かと入れ替わっているに違いない。
恋愛どころか人とのコミュニケーションもまとめにできなかった兄が、そこら辺の経験値が爆上がりだなんて信じられる話じゃない。
それか、ゲームと現実が混合しちゃっているのかもしれない。
すごく失礼な考えだけど、その方が納得できてしまうのだ。
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