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兄は新幹線のような速さで成長しているな…と、社内カフェのカウンターを布巾で拭きながら私は思っていた。
こないだ聞いたアドバイスも、経験者じゃないと語れないような内容だった。
たくさんアドバイスしてくれてありがたかったけど、あの高度な技の数々を私は巧みに使いこなせる気がしない…。
「おはよう、ふみちゃん」
カウンターから顔を上げると、石川さんがそこにいた。
「おはようございます」
「ふみちゃんのコーヒー飲まないと仕事する気になれなくて、来ちゃった」
言葉までもがいちいち可愛い。
朝から可愛くて、目が栄養をもらっている気分。
あの兄がこの世の可愛いを詰め込んだような石川さんと付き合ってるなんて、今でも驚愕している。
カフェラテのミドルサイズを注文され、レジ打ちをしながらチラチラと目を向けてしまうと、石川さんが「ん?」と小鳥のように首を傾げた。
「あ、あの…。兄から、二人が付き合ってるって聞きました」
言おうか迷ったが、思い切って伝えると、石川さんの白い肌がわかりやすく紅潮した。
ひぇ、なにこのかわいい反応…。
「理くん、あたしのこと何か言ってた?」
「えっと、なんか、可愛すぎて見るたびに発作起こすとか、言ってました」
「やだぁ。なにそれ、もう。恥ずかしい」
兄はこんな可愛い反応をする人とこれから時間を共有するんだと思うと、なんだか羨ましくなってくる。
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