不器用なわたしたち

15

　若生さんは来るだろうか。

　そんなことを考えながら仕事をしていたけれど、業務時間が終わっても若生さんは来なかった。
　そういえば兄も来てないし、今日は忙しかったのだろうか。

　肩を落としつつ、エプロンを外して鞄に入れようとしたとき、パヤヤーンと私のスマホがメッセージの受信音を鳴らした。

　この音はパリンのだ。
　若生さんかな、と飛びつく勢いでスマホをつかみ取って画面を見れば、送り主は登坂さんだった。

『緊急事態発生！まじで今すぐここ来てくれないとやばいから！』

　そんなメッセージの下に地図のリンクが送られている。
　リンクを確認すると、それは会社ビルをすぐ出たところにあるワッフル専門店だった。

　ここに今すぐ来ないとやばいって、何がやばいのだろうか。

　ついこないだもポイントカードの件で騙されているので、なんだか疑ってしまう。
　行かなくてもやばいことにはならないと思うけど、やばいにもいろんな意味があるし、やばい方のやばいだったらやばいし…。

　あとになってふみちゃんが来ないからまじでやばいことになったんだからと咎められても嫌なので、結局私は渋々、登坂さんが示した場所に向かっていた。

「カップル二人で来ると、３０パーセントオフなんだって。ふみちゃん来てくれたからお得に食べれちゃうよ。やばくない？」

　待ち合わせ場所について早々、笑顔でそう言った登坂さんに、この男のことは二度と信じないと固く誓った。