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私達カップルじゃないですよ、と異議を唱えたかったけど、恋愛未経験の私には異性の前で“カップル”という単語を言うだけでハードルが高いし、店員さんに「カップル様こちらへどうぞー」と案内されてしまったので、結局何も言えないまま歩き出した。
ガラス張りの向こうを歩く通行人を観察できちゃう席に案内され、私と登坂さんは並んで座る。
こんな地味な私と、派手な色のシャツを着こなす登坂さんがカップルになんて見えるわけがないと思いつつ、なんとなく言及しづらくて、黙ってメニューを開く。
「今日は急なトラブル発生でかなり焦ってたからさ、疲れちゃって。甘いものずっと食べたかったんだよね」
「忙しかったですね」
だから若生さんも兄も来なかったんだ、と一人納得していると、登坂さんは注文の品を決めたらしく、手をあげて店員さんを呼んだ。
「お決まりですか?」
「はい。この、カップル専用、ラブラブイチャイチャプレートのイチゴ極盛り、お願いします」
ラ、ラブラブー!?イチャイチャー!?と動揺していたのが表情に出ていたのか、登坂さんは可笑しそうに笑いながら、「ごめんって。今だけはフリしてよ。30%オフはでかいんだから」と小さい声で言いながら軽く体当たりしてきた。
私は今すぐ店を飛び出したい気分だった。
店員さんが持ってきてくれたハート形のワンプレートには、二種のワッフルが重ねられ、そこにこれでもかとばかりにイチゴを乗せ、その横にもこもこの生クリームが積乱雲のように盛られていた。
しかもチョコレートで、『ミッション♡相手のどこが好きか言い合いながら食べてね♡』とお皿に書いてあった。
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