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「まあ…。うん。けど最近はさ、石川ちゃんが俺より先にサム誘ってどっか行っちゃうから、お昼ご飯全然一緒に食べれてないんだよねぇ」 「でもそれは付き合ってるので当然ですよ、きっと」 「…え?付き合ってる?」  目を大げさに広げてこちらを見る登坂さんに、私はうっかり暴露してしまっていたことに気づいた。  口止めされているわけじゃないけど、勝手に話しちゃった…。  会社には秘密にしてるとかだったらどうしよう…。 「まじで…?サムと石川ちゃんが?え…まじ?」 「え、えっと、いや、その」 「まーでも、確かに石川ちゃん、サムにはやたら優しかったしいつもベッタリしてたもんな…。ふーん…そっか…」  今度は目頭を指で揉みだすので、一軍女子のスキャンダルにショックを受けているのだろう。 「でもいいや。俺が興味あるの、石川ちゃんじゃないし」  パッと指を離しながらそう言うので、あれ?意外だな、と思っていると、登坂さんは頬杖をついて私へ顔を向けてくる。 「俺、今は違う人に興味あるんだ」  最近ずっと思うのだけど、登坂さんのこの、粘りっこい甘さのある雰囲気はなんなのだろう。  じっとこちらを見る目から何か返事を期待されているのはわかるけど、何を言えばいいのか。  とりあえず「なるほど…?」と自信なく言ってみると、お気に召さなかったのか、登坂さんはため息を吐いた。 「ふみちゃんってあれだよね。めっちゃ鈍感だよね」 「ど、鈍感?」 「まあ、それでもいいよ。もうちょっと作戦練るから」  なんの話をしているのか、さっそくわからなくなってきた。  険しい表情をしながら考えていれば、「俺の奢りだしいっぱい食べて。あ、ダイエット中?」と尋ねられたので思考の巡りを止めて頭を振る。 「ダイエットしてないです」 「そうなんだ。実は俺ダイエット、ていうか、筋トレ中でさ」 「え、あ、そうなんですか」  「こう見えて脱ぐと結構すごいよ」 「はあ…」 「え、やだ。ふみちゃん変な妄想しちゃった?」  してないが?と心でツッコんで思わず口の形を歪ませると、登坂さんはまた可笑しそうに笑った。
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