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 僕も妹も、居間に入ってきた父の隣に立つ女性を見て、固まった。  この世の気品を詰め込んだくらい気品な女性だったのだ。  白いタイトめなワンピースに水色のカーディガンを羽織り、艶々のセミロングの黒髪を片方だけ耳にかけている。  香水なのか、紅茶の心地よい香りまでしてくる。  僕と目が合うとニコリとほほ笑む姿は上品で、気品という勝負で一本勝ちしたくらいの見事な気品さだった。  そんな女性が、ヨボヨボの茶色いアロハシャツを着た父の隣にいるのが、違和感すぎる。  まさか父は、この女性を騙して誘拐してきたのでは、なんて不謹慎なことまで考えてしまった。  妹も同じことを思っていたのかもしれない。  父が開口一番「俺のガールフレンドの佐和子だ」と宣ったので、僕も妹も限界まで目を大きくした。 「初めまして。佐和子です」  父の宣言を否定もせず、笑顔で自己紹介してくるということは、本当にガールフレンドのようだ。  気品の女王みたいな人が下品の端くれみたいな父と付き合うなんて、世の中謎だらけだなと思ったが、そういうことなら、僕が可愛い界の妖精と付き合っているのも結構謎深い。
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