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「でもね」 「はい」 「俺、サムのこと何も知らないのに、歓迎会の日に嫌な事言ったなって反省はしてるの。だから今更だけど、その、うん、ご…、うん、反省してる、うん」  登坂さんのプライドか何かなのか、ごめんと言いたいのに言えないらしい。  酔っぱらっていた時は『ごめんでぇ。ご、ごめんでぇ』としつこく謝っていたのに。  この人はお酒が入ると人が変わるようだ。 「サムは頑張ってたんだなって、ほんと、今は尊敬してる」 「え、そ、そんなこと…」 「俺さ、正直最初はサムのこといけ好かない奴だなって思ってたんだよね。だって今まで仕事の苦労も知らないで家でゲームばっかしてて、それなのに急に入ってきてみんなに凄い凄いってもてはやされてさ。勉強もしながら地道に頑張ってる自分がただの凡人に見えてきて、むかついてたんだよね」  ごもっともだと思って、申し訳なくて、僕の背中が丸くなる。  僕も登坂さんと同じ立場なら同じように思っていた気がする。 「けど、こないだのふみちゃんの話聞いてさ、色眼鏡で見てたんだなって気づいたわけ。だから、うん、やっぱ反省してるって話」  言いたいことは言い終えたとばかりに、登坂さんはアイスコーヒーをストローで吸い始めた。  どんどんと下がっていくコーヒーの水面を見ながら、こんなに正直に自分の気持ちを言える登坂さんがすごいと思い、羨ましくも感じていた。 「まあ、そういうのいろいろ全部込みでサムと仲良くしたいってわけ。わかる?だからさ、ふみちゃんに俺のこと良く言っといてよ。ね?」  少し登坂さんへの印象が良くなったのは事実だったが、大事な妹が絡むとなると話は別だ。  申し訳ないけど妹を彼には渡せない。  僕より年下で恋愛経験がやけに高いところがなんか鼻に付くのもあるけれど、僕は薄々気づいているんだ。  妹はきっと若生さんに特別な感情を抱いている。  それがラブなのかライクなのか定かではないし、というかラブとライクの違いも僕にはよくわからないけど。  仮にそれがいわゆる恋というものならば、今までお荷物でしかなかった情けない兄は、妹の恋を応援して名誉挽回と行きたいところ。  そうは思うものの、波風立てるのも嫌だから「あ、はい」と言っておく。
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