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「……」
あの時竜一は、誰と電話をしていたんだろう。何をお願いしていたんだろう。
どうして、……突然冷たい態度に変わって僕を追い返したりしたの……?
喉奥に異物を感じ、ごくんと唾を飲み下す。
考えたくないけど、考えてしまう。
そうして行き着く答えは、決まっていつも同じ──
「……お、来たよ返事」
「って。いま授業中!」
「やった、見せてくれるって!」
「マジ?! つーか、面倒だからUPしといて欲しい」
「それな!」
レールカーテンの向こうから聞こえる二人の声が、次第に大きくなっていく。
上掛けを鼻先まで引き上げた後、彼女らに背を向ける。布ずれの音でその会話を掻き消しながら、僅かに持ち上げていた瞼を再び閉じる。
『俺は、アゲハが嫌いだ』──あの時、ホスト達を引き連れたアゲハのいる前で、僕を拾い上げたのは。
抱き締めて、僕にキスを落としたのは──
きっと、アゲハの部屋で僕をレイプした理由と……同じだ。
「……」
あの台詞は、本心じゃない。
決して、僕を選んでくれた訳じゃない。
あの場に竜一がいたのは、……密かにアゲハの姿を見に来ていたから。
そこに、偶々居合わせた僕と会っただけ。
竜一の心は、あの時のまま──今も変わらずアゲハに向けられてる。
結局僕は、ただの身代わりでしかない。
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