最後の笑顔

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 自宅近くのコンビニエンスストアで、2本の缶ジュースを買った。  人に贈るものだ。彼のことだから、おそらくオレンジジュースでいいだろう。  冷蔵ショーケースの中に入っていた缶ジュースはキンキンに冷えていた。こんな暑い日だから、喜んでくれるかなと思う。そう考えると、憂鬱な気分が少しだけ軽くなる気がした。  缶ジュースをカゴに入れた後、私は速やかに無人レジへと進んだ。その場にはいたくなかった。なぜならすぐ右隣にお酒コーナーがあったからだ。  別に酒は嫌いではないが、今日は呑む気になれない。  幸いにも無人レジの利用者はいなかったので、すぐに使用ができた。リュックを持っていたが、中に大事な荷物が入っていたので有料のビニールバッグを購入した。  ジュースを買い、コンビニを出だ。ドアが開くと、そこには雲がわずかにかかった青空が見えた。 「西島(にしじま)……」  私はおもわず、そう呟いていた。                  *
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