ハピネスの判断

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ハピネスの判断

 鳥牧(とりまき)花那(かな)の朝は、「ハピネス」のアラームで始まる。  暗転していた画面が薄ピンク色に変わり、画面の中央には、ピンク色のハートマークが大きく表示される。 『おはようございます、花那さん』  花那が好きなメロディ。好きなアニメの女性キャラクターに似た音声。ユーザー名は、本名と同じ。「ハピネス」に登録したときに自動的におすすめされた設定を、変えずに使っている。 「おはよう、ハピネス」  花那がスマートフォンに話しかけることで、アラームが止まった。  「ハピネス」は、メンタルヘルスケアアプリで、社会人だけでなく花那のような高校生や小中学生も使っている。スケジュール管理もできるし、気軽に愚痴を言える、友人のようなものだ。実際の友人やSNSでは言えないことも多いので、「ハピネス」はすっかり花那の生活の一部になっている。  「ハピネス」の大きな特徴は、AI(人工知能)がスマートフォンのやり取りを分析して判断してくれることだ。スマートウォッチと連携すれば、心拍数を測ることもでき、芸能人やアスリートも「ハピネス」を活用しているとメディアで言われることもある。  「ハピネス」がリリースされたのは、今年の4月1日。花那達が高校1年生から2年生になると、多くの人が「ハピネス」を活用する生活になった。もうじき、「ハピネス」をダウンロードしてから初めての夏休みになろうとしている。
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