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(3) カミサマからの挑戦状
昼休みになると、私は千紘を百葉箱の前まで連れて来た。そこで折り紙の暗号の謎を明かし、英文の書かれた封筒が百葉箱にあったことを伝えた。すると、「すごいよ、多満子!」と千紘は歓声を上げてよろこんでくれた。
「多満子ったら、本当に探偵みたい! さすが!」
「えへへ。それほどでも」
そう言って私は、この百葉箱で見つけた封筒を取りだした。
「実は、まだ読んでないんだ」
千紘は「え?」とおどろいた顔で私を見ている。
「そうなの?」
「だれかに見られたら、また失くしそうだったから怖くてね」
私は千紘の前で、封筒から二つ折りのルーズリーフを取りだした。そしてゆっくりと開く。そこにはやはり英語の羅列があった。顔を上げて千紘に向かって眉を下げた。
「英語、読めるか自信ないんだよね」
「まあ、とりあえず見てみようよ。ね? 多満子。ほら、知ってる単語とかあるかもしれないし」
千紘の励ましにうなずきながら、私は最初の一行を読んでみた。
〈Kore wa tyousenjo da〉
「これ は ちょうせんじょう だ」
私はスラスラと読んでいた。そして目を見開いた。
「これ、ローマ字だ!」
千紘も続いて「本当だ、ローマ字だよ!」とおどろいていた。
英語で描かれていたから、きっと英文なのだろう、と思い込み、身構えていた私たちは、その暗号文ならぬ挑戦状に、あっけにとられてしまった。
「でも、これで私たちにも読めるね」
千紘の言葉で我に返った私は、呼吸をととのえてから読み直した。
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