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私はゆっくりともう一度、読みあげた。
「これは挑戦状だ。頭をつかえ。まずこの暗号をよく読め。一行も無駄ではない。そして読み落とすことなかれ。頭からきちんと読め。問題はむずかしくない。あきらめることなかれ。私のヒントを、与えよう。頭文字がKだ。あと一つヒントを出す。なぜこの暗号は、実に読みにくいか。あきらかな答えが、この文にはあるぞ。今キミの健闘を祈る。カミサマより」
私はひと通り声に出して読んでみた。思わず首をかしげる。そして千紘を見ると、千紘の目は虚ろだった。その目で私の方をチラリと見る。
「ねえ、多満子。とりあえずこの暗号で挑戦状の犯人は、頭文字がKだってことが分かったね」
私は苦笑いを浮かべながら「そうだね」とうなずいた。
「もう一つヒントがあるみたいだけど、それがいまいち分からないや」
千紘は私から暗号文――いや、挑戦状を受け取ってもう一度、声に出して読んでみた。しかし、首を横に振るばかりで、答えは出てこないようだった。
「カミサマって、誰だろう?」
「それも謎だよね」
私はポケットに忍ばせていたえんぴつを取りだすと、ルーズリーフの右隅の空白に日本語で挑戦状を書きなおしてみた。ものの三分で書ききった。読みやすくはなったけれど、意味はやはり分からない。
お昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。私と千紘は「続きは明日だね」と手紙を折りたたむと、教室に向かって駆けだした。
「多満子。これも謎なんだけど」
教室へ向かう階段を登りながら、千紘は首をかしげた。
「この挑戦状は、私たち宛てだったのかな。それともペーパーゴッドさんにとって、受け取る人は誰でも良かったのかな」
「それを知るためにも、まずは解読しなきゃね」
私がそう言うと、千紘は「そうだね」とうなずいた。
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