(5) 逃げたモーツァルトの正体

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 翌朝。千紘とともに朝の図書室に行くと、栞はめずらしくカウンターではなく「コ」の字に並ぶ座席の一席で本を読んでいた。それは千紘が以前借りて、栞に盗られたこともある、あの本だった。 『探偵はピアノマン! 涙のレクイエム殺人事件』 「栞が本を読んでるの初めて見たよ」  千紘が興味ありげに栞のそばに行くと、栞は「そう?」とほほ笑んだ。 「で?」  栞はその笑みを消して私の方へと視線を向けた。そこには一ミリの優しさもなかった。 「……たしかに土屋先生があやしいかもしれない。でも、証拠もないよ」  私がそう言うと、栞はニヤリと笑った。 「そうか。じゃあ、オレが推理を披露してやろう」
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