(2) カエル

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 いつもの朝なら、お父さんが早くに仕事に行って、お母さんは私を起こしてから仕事に向かう。けれど今日はお母さんが仕事に行く時間にはすでに私は起きていて、ふだんならまだ眠気と戦っている時間には朝ご飯を食べていた。 「めずらしいわね、多満子が一人で早起きするなんて。いつもはお母さんが起こしても起きないのに」  春のコートを着ながらお母さんは感心したような、でもすこしバカにするような物言いで私に小言をいう。私は不服そうにお母さんをにらんだ。 「たまにはね。早起きしようと思って」 「そうよ。早起きは三文の得、って言うからね」  トーストをかじりながら「まあ、そうだね」と私はうなずいた。  もし暗号が正しく解けていれば、三文以上の得になるかもしれない。私は早くお母さんが出勤するのを待っていた。 「じゃあ、戸締りちゃんとしてね。いってきます」  お母さんは家のカギをカバンにしまうと、私に手を振って出ていった。私は「待ってました」とばかりに、トーストの残りの大きなひと口を口に押し込んでオレンジジュースで流し込んだ。のどを鳴らしながら飲みこむと、立ち上がって点いていたテレビを消した。  ソファの上のランドセルを背負うと、窓のカギがしまっていることを確認して、家を出た。きちんと玄関のとびらのカギもしめる。いつもより三十分近く早い登校だ。早朝の新鮮な空気を肺いっぱいに吸いこむ。爽やかな気持ちとはやる気持ちをエネルギーに、私はかけ足で通学路を走って行った。
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