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キョウダイ
「疲れちゃった」
「お疲れ。あれ? 一人? 慧史が迎えに行くんじゃなかったっけ?」
「電話あって抜けれないから、店で待ってろって」
「そっか。で、撮影どうだった?」
卯花さんがカウンターに座った俺に炭酸水を出してくれた。
「ん。ただヤられてたらいいのかと思ってたら、なんか、凄く、大変だった」
AVに出ろって言われて出かけたのは朝だったのに、なんのかんのでもう宵の口になった。
「見られてすんのって、やっぱキツいね。だってこっちは裸でアンアン言ってるのに、ちょっと横みたら、服着た真面目な顔の人に囲まれてるんだよ?なんか、ほんと間抜けなの。で、やっとなんとかいい感じになってきたかと思ったら、カットー!! とか言われて体位変えたりとかするから、その度に気持ち切れちゃう。ほんと、タチの人って凄いよね」
今日の相手は一つ年上の19歳の子だった。
男とするのは初めてだったらしくて、だから俺も痛くて、苦しくて、散々だった。
「ね、あれさ、ほら、お尻から精液足らすの、あれ、偽物って知ってた? それはなんか面白かった」
「まあ何事も経験ってことだな」
卯花さんと会うたび、聞けなかったこと。
他のボーイの子もまだそんなに出勤してないから聞くなら今しかない、かな?
「ねえ、卯花さん、慧ちゃんて女の人と住んでるでしょ? あれって……彼女?」
卯花さんは一瞬目を丸くして俺を見た。
「ああ、そういや、こないだ、おまえら人の家でおっ始めようとしてたな」
「……え?」
「あれ、俺の家。で、あの女は俺の女」
「そうなの? ……え…じゃあ、慧ちゃんは……」
「居候。どっかに部屋あるみたいだけどな。女にばれて帰るのが嫌だっていって転がりこんでんだ」
「……その割りに……なんていうか…」
「自分家みたいだろ? ふざけんなって言っといてくれよ。連れ込むなって言ってはあったけど、まああの日は俺が送り込んだみたいな感じになってたからしゃあないけどな。あいつ、どこまでいっても末っ子根性が抜けないっつうか……」
「……?」
「俺ら3人、まあキョウダイなんだよ」
「え?」
だって……卯花さん、あの女は、俺の女って……。
えーと……。
混乱する。
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