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トランプタワー
「今日の客どうだった?」
ソファーに腰掛けて仕事用の小さなノートパソコンに向かう慧ちゃんは、まるでCMみたいで見蕩れるほどにカッコイイ。
床に座ってソファーにもたれ、飼い犬よろしくすっかりその姿に釘付けになってた俺は、パソコンから視線をあげることなくそう聞かれて、ちょっととまどう。
これが業務連絡っていうもんなのかな?
うちの店には業務報告書っていう面倒くさいシステムがあるとは聞いてた。
どんな客でどんな性癖でどういう雰囲気を好みそう、なんていうのを書くとか書かないとか。
俺は基本的に店とは別顧客の相手をさせられることのが多いから、報告書を書いたことなんてないのはもちろん、あんまりそういうのを言ったこともない。
店舗も増えたしオーナーとして色んな客層を把握しないといけないのかな?
けど、何言えばいいの?
「……えと、優しかったよ? でも……」
数時間前にベッドを共にしたオジさんを思い出すと少し眉が寄ってしまった。
僕のこと、まるで崇めるみたいに可愛がってくれてたのはわかったけど。けど、なんていうか……。
「……ずっと俺の舐めてた。あんまりずっとだから、なんか……まだヒリヒリする。それで……」
記憶を辿る為にあさっての方をみやって詳細をそこまで言ったときだった。
「もういい」
グッと腕を掴まれたかと思うとソファの上に引き上げられた。
「……んっ……」
唇を塞がれて、そのままソファーに押し倒される。奪うようにキスされてすぐに息があがってしまった。
嫉妬、してくれてるんだ、よね?
「…ふっ…けいちゃ……」
それがただの所有欲だとしても。
それでも、嬉しい。
「…あ…はぅ…んっ」
少し荒っぽい抽送に解かれないように脚を絡めれば、慧ちゃんは熱い息を吐いて俺の耳に甘く歯をたてる。
「…る…輝……」
そして何度も何度も耳元で、名前を呼ばれて。
「お前は誰のものだ?」
と、熱い囁きを注ぎ込まれる。
「…あ…はぁっ…ゃん…けいちゃんの。俺に…は、あぁっ! …慧ちゃんっ! けいちゃんだけぇっ…」
折れるほど脚を持ち上げられて、壊れそうなくらい深く激しく穿かれて、息もできないくらい昂められて。
何も。
考えることなんて、できなくなる。
慧ちゃんが俺の中で果てるって日々がほんのちょっと当たり前になったと思ったとき。
そんなのは、トランプタワーみたいにあっさり崩れてしまうんだってことを、知った。
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