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接待
「堅苦しい挨拶はいらんよ。さあさあ、座りなさい」
一礼して里山さんの横に座る俺の上から下までを、笑みを浮かべたおじさんが視線で舐めまわす。
おじいさんと、おじさんの間くらいかな?
肌はテカテカするくらい脂っこそうだけど、深いしわとか混ざる白髪とかに年齢を感じる。
「ああ、念願叶ってやっと会えたよ」
「輝夜、先生に酌を差し上げんか」
「……あ、はい」
高そうな徳利に伸ばした手を、おじさんが節くれだった手でとらえる。
「思ったとおり、まるで撫でこまれた雪の碁石蛤だ」
手の甲を指の腹で撫で擦られ、その手が腕から肩へと伸びるまでもなく、おじさんが俺に何を求めてるかなんて十分わかったけど、けど、俺は慧ちゃんの商品なのに、里山さんがいる意味がわからない。
だって、こういうのは店とか土地とかみたいに所有者の承諾が必要なはずで……。
「いやはや。四宮くんにお願いしてたんだが、なかなか埒があかなくてねえ。堪え性がないもんで、ついつい木嶋君に声をかけさせてもらったんだ」
木嶋君。
それは慧ちゃんの組の、若頭の名前。
……なんなの?
何が、どうなってるの?
「ははは。四宮はまだ青臭いところがありましてね。先生に目をかけていただけたことは十分理解しとるんですが、何せこの輝夜はあれの育てた稼ぎ頭なもんですから。ですから先生、あの件是非に……」
「その点は心配いらんよ。四宮くんにもよく言い含めておいてくれ」
何が何なのか、すっかり話の見えないまま、でも慧ちゃん不在のまま話はついてるみたいで、そして俺がそういう対象としておじさんに呼ばれてるっていうのは間違いなくて───
中庭の獅子脅しの音が、妙に耳に響いた。
「……ん…ぁ」
センセイと里山さんが難しい話をしてる間にも、俺はセンセイにシャツのボタンを外されベルトを引き抜かれて、あちこちを弄りまわされる。
人前でのセックスは何度も経験済みではあるけど、なんといっても里山さんは男同士の関係をよく思ってないっていうんだから、そんな人の見てる前での行為は、どうにもいたたまれない。
いつもみたいに慧ちゃんにされてるって脳内変換することも叶わず、何よりダイレクトに性器に触られてないってのもあって、とても感じるどこの話じゃなかった。
そうこうしてる間に粗方の話が片付いたのか、いよいよセンセイは里山さんとの会話より俺への行為に気持ちが入ってきたみたいで俺の耳を舌で嬲り始める。
そしてなんと御猪口の中の日本酒に指を浸すと、俺の後ろの穴をその指でつつき始めた。
「……やっ…」
とんでもない行為に里山さんを見れば、その眼に映るのは蔑みの色。
キュッと、心臓が歪んだ。
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