嘲り

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嘲り

 わけのわからない不安と恐怖。  塗り込められるアルコールが気化する際の、ひんやりとした妙な感覚と不快な指の動き。  なんだかもう泣きたくなってくる。  「では先生、私はこれで……」  話は終わったとばかりのセンセイの態度に里山さんが膝を立てたそのときだった。 「先生、よろしいでしょうか?」  俺の中を指で犯し始めてたセンセイは、障子の向こうから聞こえた男の人の声に小さく嘆息した。 「なんだ?」  頭を下げて入ってきダークスーツの人は、男が男の尻に指を突っ込んでるっていう、まあ通常ならざる光景にも顔色ひとつ変えることなくセンセイの横に膝をついた。  しぶしぶ俺から指を抜いたセンセイに何かを耳打ちする男の人。次の瞬間には、単なるエロオヤジだったセンセイの目が怖いおじさんの目になって、すっくと立ちあがった。 「せっかくの時間だというのに野暮な用ができてしまったようだ。輝夜くん、次を楽しみにしてるよ」  センセイは力なく萎れたままの俺の前をグッと握り込み耳もとに粘っこい息をかけると、見送りに立つ里山さんを制し、スーツの人ともども慌ただしく座敷を出ていった。 「ちっ……なんだよ。予定が狂っちまったじゃねえか」  センセイの前とは打って変わっての野卑な物言い。  片膝をつくとネクタイを緩めながら御猪口の中の酒をぐっと煽った。 「変態オヤジが。全くもの好きなこった」  ズボンを履き直し、シャツのボタンを留める俺を眺めながら鼻で笑う里山さんは手酌で杯を重ねる。 「……あの……」 「おまえとセンセイ様がヤッてる間に、おらぁ女秘書としっぽりって筈だったのによぉ」  非難がましい目を向けられ、そんなこと言われてもと思うけど、なんか怖くて何も言えなくて、それこそ俺はいつ解放されるんだろうって思ってたら、いきなり立ち上がった里山さんに腕を掴まれた。  強引に引き起こされて、スパーンっと襖のすべる音がした方へ体を放り投げられる。  畳と、繊維の匂い。  ぞんざいに投げ出された割には体に衝撃はなく、いっそ掴み起こされた時の腕の方がまだ痛いほどだったのは、俺の下には高級な蒲団が敷かれていたからだった。 「センセイ様といい、慧史といい、男相手の何がいいのかわからんが、まあ、ものは試しだな」  座敷の明かりを背に立つ里山さんが自分のベルトを外してファスナーをおろすと、後ろ手をついて呆然としてる俺の前に、グロテスクなモノを突き出した。
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