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暴力的な世界
目の前に突き出された太く赤黒いそれは、いわゆる普通のモノじゃなくて、たぶん真珠を埋めてるっていう、それ。
「咥えるのは本職だろう」
俺は反射的に顔をそむける。
すぐに体を返してその場から逃げようとしたけど、あっけなくつかまれて引き戻されてしまった。
「何逃げうってんだ、ああん?」
「……だって、あんたは客じゃないもんっ! 俺は慧ちゃんのだもんっ!!」
必死の思いで言い切ったとたん、ギュッと容赦なく前髪をつかまれて顔をあげさせられる。
「生憎だけどな、てめえはもう慧史のもんじゃねえんだよ。『月の宮』は俺が仕切ることになったんでな」
「嘘っ!!」
だって慧ちゃんはそんなこと何も言ってなかった。
ただ……。
ああ、でも……。
「や……んっ…っぐっ……」
壊れるくらいの力で頬を掴まれて、無理やりに開けられた隙間へと凶器みたいなソレが突っ込まれる。
「噛むなよ。殺すぞ」
すごまれるまでもなく、強すぎる手につかまれては噛みつくことなんてできない。好き勝手に喉の奥まで突っ込まれて、挙句そこで抽挿しようとするから息ができなくて、苦しくて、吐きそうで、涙が滲んだ。
「へたくそだな、おい。ちゃんと舌ぁ使えよ」
ぼこぼこしたソレで口の中はいっぱいで、それこそ舌を動かす余地すら与えてくれてないのに、それにまだグイグイ頭を押し付けられて、ついには強引に頭を揺すぶられて喉の奥を容赦なく犯してくる。
「……っぐぁ」
やっと解放されたと思ったら息を整える間もなく布団の上の突き倒された。
「向こうむけ。てめえと同じもんぶら下げてると思ったら萎えちまわぁ」
強引に腰を引き上げられ四つん這いの格好にされられる。なんとか逃げようと手を伸ばして視線を前に向けたとき、とんでもないものが眼に入った。
そこには白いロープの束とか赤い蝋燭とか筆とか、なんかわかんない道具が朱塗りのお盆みたいのに載せられてて、体の気がゾワッて逆立った気がした。
俺の視線に気づいたらしい里山さんが面白そうに笑う。
「センセイ様のご趣味だよ。今日は使ってもらえなくて残念だったな。次からはぜひ可愛がってもらえ」
「……ひっ…やっ!!」
茫然としてるうちにも両足を捉まれて脚の間に里山さんを挟むみたいにして引きずりよせられた。
腰をがっしりと捕えられ、後ろに冷たく滑る感覚があったと思ったら、グッと凶器みたいなそれが押し付けられる。
「だめっ! そんなのいきなり……やめっ…っ!」
一瞬視界が無くなった。
息が、できない。
全く慣らされることもなくいきなり、それも妙なもんつけて変なカタチしたペニスを突っ込まれたそこに久々の激痛が走った。
学生の頃、輪姦されたとき以来の痛み。
今の仕事を始めてから、そんな目にあったことなんて無かった。
たまに慧ちゃんがひどくすることはあったけど、それでもこんな、まるで道具みたいな扱いをすることなんてなくて、お客さんはいつも僕を崇めるみたいにして可愛がってくれる人たちばかりで、だから……。
自分の居る世界がいかに暗くて、暴力的かってことを思い知らされた。
「……ぐっ……うぅっ…」
「力抜けっ」
お尻を叩かれて乾いた音が部屋に響いた。
痛さとか、苦しさとか、情けなさとか、色んなもので涙があふれて止まらない。
慧ちゃん。
助けて慧ちゃん。
どこに居るの?
こんなの嫌だ。
「おら、自分で腰ふってみろ」
突っ込んだまま腰を数回押しつけるようにして促された。
嫌だ嫌だ嫌だっ。
お腹の圧迫とあわせて吐き気がこみ上げる。
早くイッてくれと、ただもう心の底から願うしかなかった。
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