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三角
「あっち行ってみるか」
桟橋の方を示した長い指が下される。
愛撫より殴る方を望むには、やっぱり奇麗すぎるんじゃないかって思える手だ。
さみしいような、切ないような、それでも愛しくてたまらない感情がこみあげて、その手に縋りたくなってくる。
だから────
「……手、繋いでいい?」
サービスエリアでアイスを一緒に食べてくれたっていう事実の力を借りて、恐る恐る聞いてみた。
なのに。
「無理」
あっけなく玉砕してしまう。
「ふーんだ」
まあどうせ無理だろうとは思ったけどさ。
海にむかって歩きだす慧ちゃんの後ろをついてって、そんで、そんで、また、顔が緩んだ。
「……!」
だって、腕が、三角。
それは、それは、腕を組んでもいいってことだっ。
「手つなぐとか、子供っぽいことできるか」
前を向いたまま不機嫌な声を洩らす慧ちゃんが何か子供っぽく見えて可愛くて、ますます一層好きになる。
「えへへっ」
慌てて飛びついて、慧ちゃんの腕に抱きついた。
「重い」
「へへ」
明日は、デレすぎて顔が筋肉痛になってるかもしれない。
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