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お披露目
「俺の横に立って笑ってればいいから。あぁ、ほら、俯かないで前見て」
慧史さんは慣れた様子で、きちんとしたスーツ姿の人達に挨拶を交わしていく。
確かに慈善事業家のチャリティーパーティとは言ってたけど、ほんとにそうみたい。ヤクザとチャリティーって真逆だから、慧史さんのブラックジョークなのかもとか思ったりもしたんだよね。
でもまあ、ヤクザの集まりじゃくて良かった。組事務所でも怖かったのに、その中でも偉いってことは怖いってことで、その集団の集まりなんて絶対やばいでしょ。
堂々と挨拶を交わす慧史さんのカッコいい姿を斜め後ろから見ながら、ヤクザというより、お洒落なマフィア? なんて思ってたら、一人のオジさんがグラス片手に近寄ってきた。
「お久しぶりです。但馬様」
「やあ久しぶり。おや? これは綺麗な子を連れてるね」
慧史さんに挨拶をしたオジさんの目が俺に向けられて、どうしていいかわからなくて慌てて慧史さんを見た。
「但馬様、申し訳ありません。彼はまだこういう場に不慣れなもので」
「ははは。それも新鮮でいいねぇ。で、四宮くん、店にはいつ?」
「はい。今、準備をしている最中ですので、またご案内をさせていただきますよ」
「楽しみにしてるよ。ああ、川崎さん、最近どうです、スコアの方は───」
俺はもう、どうにか下を向こうとする顔を上げとくのに必死で、オジさんが他の人と話始めたから、やっと視線を下げることができた。
だから、あの時気付けなかったんだ。
俺がオジさん達からどんな目で見られてたかってことに。
結局あの日は俺のお披露目っていうのを、兼ねてたんだってことに。
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