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ーキーン、コーン。
お昼が始まるチャイムの音が鳴る。
この会社は親切なことに、お昼前とお昼後にチャイムが鳴って知らせてくれる。
ん〜!!
両手を高くあげて伸びをする。
やっと、お昼だあ。
今日は、何を食べようかな。
なんて、悩んでいると、
「歩実さん、ご飯行きません?」
啓介くんがお昼に誘ってくれた。
「うん、行こっか。何食べたい?」
「何でもいいっすよ」
「じゃあ、食堂でも行こっか」
「はい」
このビルには私たちの所属している会社しか入っていないため、食堂がある。
他のランチ店より、少しだけ安くボリュームもそこそこある昼食が食べられるで人気な食堂でもある。
啓介くんと食堂に向かおうと、廊下を歩いていると…。
「やだあ、誠司さんったらっ!」
聞き慣れた声と同時に自分の歩く先から私たちに向かって歩いてくる男性と女性が見えた。
男性と女性は、誠司さんと元・後輩の美穂ちゃんだった。
「ははっ」
ニコニコと美穂ちゃんの隣では笑顔で笑っている誠司さん。
「誠司さんのご飯楽しみにしてまあす♡」
私が目の前にいるってわかっているはずなのに、大きな声でそう言った美穂ちゃん。
誠司さんは私の存在にまだ気付いていないみたいだ。
カツン、カツンと、徐々に私たちと誠司さんたちの距離が縮まっていく。
私は、誠司さんと美穂ちゃんの姿を見たくなくて、ペコリと軽く頭を下げて、足を止めた。
そして、二人の顔を見ないように誠司さんたちが通り過ぎ去った後、歩きを進める。
けれど、私の胸の中はとてもモヤモヤしていた。
あれは、何なの?
美穂ちゃんがわざと私に聞こえるように言っていた気がする…。
遠目だけれど、美穂ちゃんと目があった気がするんだよね…
それに『誠司さんのご飯楽しみにしてる』って、どういうことなんだろう?
そんなもやもやを抱えながら、啓介くんと一緒に食堂に向かった。
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