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お昼休み。
啓介くんと3階の備品倉庫でお昼ご飯を食べる。
ここの部屋はあまり人が来ないから、何かあった時はここで啓介くんと一緒に食べている。
「で、何があったんですか?」
食べる準備をしてそうそう話を聞いてきた啓介くん。
いきなりで驚いたけれど、お昼の時間はそんなにない。
なので、とっとと本題の話をしていく。
「え、あ〜と、、」
昨日の誠司さんの携帯の話を啓介くんにしていく。
少しして話終えると。
「はあ?これ明らか女じゃないですか」
そう言って、私よりも怒っている彼。
「まあ、そうだよね…」
机の上に置いてある携帯の画像に視線を落とし、ため息がこぼれた。
「このヒロキって女、誰かわかってないんですか?」
啓介くんの問いに、首をコクリと縦にする。
…わかっていない訳ではない。
ただ、証拠がないだけ。
だから、名前を安易に言っていいのかわからない。
「大丈夫です。誰にも言いませんよ」
私の目をしっかりと見て、はっきりと言った啓介くん。
その眼差しに嘘偽りはなく、真っ直ぐな目だった。
啓介くんになら話してもいいかな…?
でも、私たちに巻き込んでしまうことになる…。
啓介くんへの罪悪感が徐々に募っていき、目が泳ぐ。
「歩実さん」
不意に名前を呼ばれて、視線を啓介くんに戻す。
「俺を巻き込んでください。
大丈夫ですから。俺を頼ってください」
啓介くんは、柔らかい声色で、優しく微笑んだ。
…っ、
啓介くんの優しさに、目に涙が溜まる。
正直な話、
こっちに友達もいなくて、簡単に相談できる人もいなかった。
もちろん、地元に帰れば友達はいるが、みんな子育てや仕事で相談できる余裕なんてない。
それに、両親には絶対に言えなかった。
だって、私の両親は誠司さんのことをすごく気に入っていたから。
そんな両親を悲しませたくなかった。
だから、啓介くんの優しさに、とても救われた。
「あり、がとう…っ」
頬にツーっと涙が伝った。
それを指で優しく拭ってくれる啓介くん。
「いつでも、逃げていいからね?
啓介、くんは、巻き込まれた、だけ…だからね…?」
「そんなことしませんよ。
俺、歩実さんに協力します。」
どうして、ここまで言ってくれるのかわからない。
きっと、仕事の先輩だから、という安易な理由だろうけれど。
理由なんて何でもいい。
ただ、私の話を聞いて、意見をくれるだけでも、本当にありがたい。
啓介くんという存在が私を救ってくれている。
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